文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解-

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研究概要

研究概要(PDFファイル)

本領域の目的

人の心はいかにして発生し発達するのか?発達障害はなぜ起こるのか?その解明は胎児期にまでたどるべきとの見方が最近急速に強まっている.しかし,ヒト胎児の研究は,倫理的にも技術的にも従来の方法論では極めて困難である.本研究は,ロボティクス,医学,心理学,脳神経科学,当事者研究が密に協働して,胎児からの発達を観察しモデル化しシミュレーション実験し解釈することで,その根本原理を明らかにするとともに,様々な環境要因に伴う変化の様相を明らかにする構成論的発達科学を世界に先駆けて始動し推進する.そして,新たな発達障害理解に基づき,真に適切な包括的診断法と支援法,支援技術を構築する.

本領域の内容

上記目標を達成するために,A. 構成論,B. 人間科学,C. 当事者研究の3研究項目を設定する.

A. 構成論

研究項目 B,C からのデータと仮説を統合し,胎児から幼児期までの連続的認知発達モデルを構築し,環境変動を加えた実験を行う.また,人間科学の観測に用いる新たな計測・解析技術を開発し提供する.さらに,発達障害者の支援システムを当事者研究や人間科学分野の協力のもとに開発する.

B. 人間科学

胎児期から幼児期までの定型発達と発達障害の発達過程を,一貫した定期的な経過観測によって明らかにし,そのデータをAに提供する.臨床医学,発達心理学,脳神経科学の最近の知見を網羅し,運動・知覚・認知・言語から社会性や睡眠の発達まで,個別領域の発達のみならず領域間の関係を明らかにし,発達早期からの包括的診断法を構築する.社会的認知の基盤である自他認知につながる身体感覚の発達については特に重点を置き,周産期児を対象として精査し,モデル構築に寄与する.

C. 当事者研究

発達障害者が自らの感覚や経験を観測し体系的に記述し,内部観測理論を構築し,AやBに提供する.既に,通常「社会性の障害」とされる自閉症の本質が実は身体感覚や視聴覚等の情報統合の困難であるとする「情報のまとめあげ困難説」を見出しており,これを軸に研究を展開する.その検証のための実験心理学的評価と,理論を踏まえた支援技術の構築,当事者研究の治療的意義の検証にも取り組む.また,Aが提出するモデルおよび支援法・支援技術とBからの知見について当事者観点からの検証と意味付けを行う.

研究内容と期待される効果(日本語)
図1 本領域の研究内容と期待される成果

期待される成果と意義

本研究では,発達障害当事者研究で見出された仮説と人間科学(医学,心理学,脳神経科学)が提供する胎児期からの発達観測データをもとに構成論(ロボティクス,情報学)がモデルを構築し,その結果を人間科学と障害当事者が評価,意味付けするという,世界で初めての学融合的研究の枠組みを構築し,展開する.これにより,既存の学問分野の枠に収まらない新興・融合領域の創成を目指す.同時に,発達と発達障害に関して,従来の要素的知見を超えた,システム的理解を打ち立て,当事者にとっても意味のある新たな理解と支援法・技術,および,発達の全体像を踏まえた包括的診断法を構築する.

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