文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解-

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計画研究

A01班: 胎児・新生児シミュレーションに基づく初期発達原理とその障害の解明

実世界で真に適応的に振舞える知能システム構成原理の探究は、人間の認知機能や学習機構の研究を経て、最近、原初の身体・環境・神経系の相互作用からの連続的発達原理の解明に挑み始めました。一方で、発達障害の科学的解明では、原因遺伝子の発見競争を経て、最近、周産期からの環境相互作用の影響の重要性が指摘され、早産児の胎内経験短縮や新生児期運動異常と発達障害の関連性も報告され、胎児・新生児期の発達解明の重要性が急速に増しています。
本研究では、胎児期から乳児期までの連続的発達シミュレーションを構築し、条件を変化させつつ実験することで、環境要因や感覚運動経験が脳神経系と認知行動の初期発達に与える影響を明らかにします。また、心理学・脳科学・医学の知見と定量比較を行うため、胎児・新生児の認知運動計測解析の新手法も提供します。さらに、これらの成果に立脚し、当事者研究や医学と協力して、発達障害の真の理解に基づく包括的診断法や支援法・支援技術の構築を目指します。

  1. 胎児・新生児発達モデル:胎児の身体・子宮・脳神経系モデルと乳児型ロボットを構築・精密化し、連続発達シミュレーション実験と発達原理解明に取り組みます。
  2. 胎児・新生児の計測解析技術:胎児の超音波撮像データの解析技術やNICU内新生児用の運動計測・解析技術等を開発し、B01、B02班に提供します。
  3. 領域内融合研究:認知脳発達モデル、胎児・新生児計測解析、診断・支援技術に関する異分野融合研究を推進します。

 

図1 A01班研究概要

 

 

図1 A01班研究概要
 

A01班 代表 國吉 康夫 東京大学・情報理工学系研究科・教授
分担 多賀 厳太郎 東京大学・教育学研究科・教授
森 裕紀 大阪大学・工学研究科・助教
長久保 晶彦 (独)産業技術総合研究所・知能システム研究部門・研究員
原田 達也 東京大学・情報理工学系研究科・准教授
大村 吉幸 東京大学・情報理工学系研究科・助教
山田 重人 京都大学・医学研究科・教授
連携 乾 敏郎 京都大学・情報学研究科・教授
木原秀樹 長野県立こども病院リハビリテーション技術科
中野尚子 杏林大学保健学部理学療法学科・教授
高谷理恵子 福島大学人間発達文化学類・准教授
特任 儀間 裕貴 東京大学・教育学研究科・特任助教

A02班:社会的認知発達モデルとそれに基づく発達障害者支援システム構成論

従来、自閉症などの発達障害は「社会性の障害」と説明されてきましたが、近年、当事者研究者らの報告により、その原因が「感覚・運動情報のまとめあげの困難さ」にあることが指摘されています。一方で、 養育者は乳幼児に働きかける際に運動や発話を誇張したり分節化するなどして、乳幼児の知覚・運動経験のまとめあげを支援していることが示唆されています。
本研究では、乳幼児の認知発達を、感覚・運動経験から随伴性などの不変構造を発見・生成し、それを繰り返す過程と捉え、養育者との関わりが社会的認知発達に及ぼす影響を明らかにします。乳幼児の発達を行動解析とモデル化の二つのアプローチから探求し、その知見を応用した発達障害者の支援システムを開発します。

      

  1. 乳幼児―養育者インタラクションの定量的解析:情報理論の概念を応用して、乳幼児と養育者の社会的随伴性や身体協応の発達・適応を定量的に評価します。B01、B02班と協働して、児の随伴的応答に基づく発達障害の早期診断法の確立を目指します。
  2. 神経回路モデルを用いた認知発達のモデル化とロボットによる検証:神経回路モデルを用いて、乳幼児の認知発達とそれを支援する養育者のメカニズムを提案します。モデルに摂動を加えた際の挙動を解析することで、発達障害の神経的・身体的・社会的要因を探ります。
  3. 発達原理を応用した支援システムの開発:上記で得られた知見をもとに、発達障害者の感覚・運動情報のまとめあげを支援するシステムを開発します。C01班と協働して、情報のまとめあげ困難説をより精緻にモデル化します。

 

図2 A02班研究概要

 

 

図2 A02班研究概要
 

A02班 代表 長井 志江 大阪大学・工学研究科・特任准教授
分担 尾形 哲也 早稲田大学・理工学術院・教授
田中 文英 筑波大学 システム情報系・准教授
吉川 雄一郎 大阪大学・基礎工学部・准教授
西出 俊 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部・講師
連携 浅田 稔 大阪大学・工学研究科・教授
特任 Lars Schillingmann 大阪大学・工学研究科・特任研究員

B01班: 胎児期からのハイリスク児の臨床観察による発達障害理解と包括的診断法構築

B01班は実際の医療現場からの診察を通して、胎児期から幼児期まで観察し、発達障害が形成されてゆく過程を継時的にかつ系統的に明らかにしようとするものです。胎児期には、胎児の動き、心拍、顔面筋運動の計測だけでなく、母体の状態なども含んださまざまな周産期要因や、内分泌機能を含む生化学的検査などを行い、その結果を総合的に判断することで、胎児をハイリスク群とローリスク正常群に選別していきます。出生後の新生児期には、これらの群を対象に、脳波、ポリグラフ、光トポグラフィーによる酸素代謝の計測、アクチウオッチなどを用いた睡眠リズムの解析、生理学的検査を総合的に行います。乳児期以降は視線計測による視聴覚認知検査、ソフト・ニューロロジカルサインを含む神経学的診察などを行い、脳機能障害の有無や環境因子の影響などを確かめます。発達障害の診断については上述した方法に加えてベイリー発達テストや、ADOS、CBCLなどの精神科的診断方法を乳児期までさかのぼって計測できるように改変し、精神科的診断と小児神経学的診断を融合させた臨床診断方法を確立します。A01班とは胎児期の行動や顔面筋の運動(表情)などの観察を共同して実施しており、胎児期の行動のシミュレーションに使用されています。また、心理研究班(B02班)と成果を精査し、発達障害当事者班(C01班)とは脳機能計測で共同研究を行います。

 

図3 B01班研究概要

 

 

図3 B01班研究概要
 

B01班 代表 小西 行郎 同志社大学・心理学研究科・教授
分担 三池 輝久 社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団兵庫県立リハビリテーション中央病院内子どもの睡眠と発達医療センター・特命参与
諸隈 誠一 九州大学・環境発達医学研究センター・特任准教授
日下 隆 香川大学・医学部付属病院・講師
松石 豊次郎 久留米大学・医学部・教授
小西 郁生 京都大学・医学研究科・教授
船曳 康子 京都大学 人間・環境学研究科・准教授
秦 利之 香川大学・医学部・教授
連携 村井 俊哉 京都大学・医学研究科・教授
最上 晴太 京都大学医学部附属病院産科婦人科・特定病院助教
山下 裕史朗 久留米大学小児科・教授
小西 行彦 香川大学医学部附属病院小児科・助教
西田 智子 香川大学教育学部特別支援教育コース・教授
花岡 有為子 香川大学医学部附属病院周産期科女性診療科・講師
金西 賢治 香川大学医学部付属病院総合周産期母子医療センター・准教授
田島 世貴 兵庫県立リハビリテーション中央病院神経小児科・医長
荒田 晶子 兵庫医科大学 生理学・生体機能部門・准教授
堀之内 崇士 久留米大学 産科婦人科学教室・助教
特任 松田 佳尚 同志社大学赤ちゃん学研究センター・特任准教授

B02班: 周産期からの身体感覚と社会的認知の発達的関連性の解明に基づく障害理解

発達障害は生物学的要因による中枢神経系の機能障害とみなされてきました。しかし、最新の研究では、周産期の異質な経験環境や胎内経験の短縮が、発達障害の発症と関連することが示されつつあります。
本計画班の最終目標は、「社会的認知」機能に焦点をあてた認知発達モデルを構築、提唱することです。とくに「身体感覚(内―外受容)」の個人差に着目し、社会的認知との発達的関連をボトムアップ的に明らかにします。具体的には、以下のアプローチから研究を進めています。

  1. 身体感覚とその発達的評価:満期産児および早産・低出生体重児の比較を主軸に、周産期からの自己身体内-外受容感覚の評価と両者の発達的関連の解明をおこないます。身体外部刺激への感覚と身体内部感覚の両面を、生理反応(心拍・脳波等の神経系、メラトニン等の内分泌系)や行動指標(視線探索や自発運動)から評価します。成果は、医学(B01班)、発達障害当事者(C01班)の観点からも精査します。
  2. 周産期からの身体感覚の発達を基盤とした社会的認知の予後と「社会性認知発達モデル」の構築:表情や視線等の社会的刺激に対する中枢神経系、内分泌系反応、および心理学的認知課題に対する行動反応を指標とし、生後2年間(6、12、18ヵ月)にわたる社会的認知の予後を縦断的、連続的に精査します。結果はクラスタリング解析し、周産期からの身体内―外受容感覚との発達的関連を明らかにします。生体データをA01、A02班に提出し、シミュレーション等の手法により双方向的に検証を重ね、社会性認知発達モデルを構築します。

 

図4 B02班研究概要

 

 

図4 B02班研究概要
 

B02班 代表 明和 政子 京都大学・教育学研究科・教授
分担 河井 昌彦 京都大学・医学研究科・准教授
清水 慶子 岡山理科大学・理学部・教授
福島 宏器 関西大学・社会学部・准教授
足立 幾磨 京都大学霊長類研究所・助教
連携 板倉 昭二 京都大学・文学研究科・教授
開 一夫 東京大学・総合文化研究科・教授
長谷川 豪 京都大学・医学研究科・助教
特任 鹿子木 康弘 京都大学教育学研究科・特定助教

C01斑:当事者研究による発達障害原理の内部観測理論構築とその治療的意義

自閉症スペクトラム障害は「社会性やコミュニケーションの障害」と説明されてきましたが、当事者の困り感に寄り添った社会側の配慮を構想するためには、社会を変数としてとらえ、障害を個人の特性に還元するのではなく、個人と環境の複雑な相互作用の結果としてみる構成論の見方が必要です。類似した体験をもつ人々の協働によって、体験に合った言語と説明理論を生み出す「当事者研究」からは、対人関係以前の「情報のまとめあげ困難」が根本的な特性であり、そこから知覚・運動レベルの問題や対人関係での困難が統一的に説明できるという仮説が提起されています。
本研究ではこの「情報のまとめあげ困難説」を定式化し、心理実験や支援技術による介入を通じて検証していきます。また、発達障害者にとって当事者研究に取り組むこと自体が有益さをもつかどうかを評価します。

  1. 当事者研究の方法論確立とその有益性評価:当事者研究を継時記録していき、会話分析や自伝的記憶研究の方法を用いて方法論の開発や効果分析を行います。
  2. 実験心理学的評価:発達障害者における複数感覚の同期性検出、運動指令と感覚フィードバックの因果性検出における時間窓を実験的に測定し、さらに時間窓の適応性を見ていきます。
  3. 聴覚過敏研究:聴覚過敏症状の実態調査を行うとともに、補聴器技術や情報インターフェイス技術による症状緩和が認められるかどうかを見ていきます。
  4. 痛み研究:発達障害者における慢性疼痛の合併率を定型発達者と比較し、測定によって痛覚プロフィールを見ていきます。

 

図5 C01班研究概要

 

 

図5 C01班研究概要
 

C01班 代表 熊谷 晋一郎 東京大学・先端科学技術研究センター・特任講師
分担 加藤 正晴 NTTコミュニケーション科学基礎研究所・リサーチスペシャリスト
向谷地 生良 北海道医療大学・看護福祉学部・教授
石原 孝二 東京大学・大学院総合文化研究科・准教授
連携 中邑 賢龍 東京大学・先端科学技術研究センター・教授
巖淵 守 東京大学・先端科学技術研究センター・准教授
小倉 康嗣 立教大学社会学部・准教授
住谷 昌彦 東京大学・医学部付属病院・准教授
大沼 直紀 東京大学・先端科学技術研究センター・客員教授
藤野 博 東京学芸大学教育学部・教授
柏野 牧夫 NTTコミュニケーション科学基礎研究所・上席特別研究員/人間情報研究部 部長
古川 茂人 NTTコミュニケーション科学基礎研究所人間情報研究部・主幹研究員
浦野 茂 三重県立看護大学看護学部看護学科・准教授
特任 綾屋紗月 東京大学先端科学技術研究センター・特任研究員
浅田晃佑 東京大学先端科学技術研究センター・特任研究員
I-Fan Lin NTTコミュニケーション科学基礎研究所・特任研究員

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