文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究:構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解-

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公募研究

公募研究概要(研究概要(公募2014)

新学術領域研究(研究領域提案型)の研究概要

構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解-

領域略称名 構成論的発達科学
領域番号 4401
設定期間 平成24年度~平成28年度
領域代表者 國吉 康夫
所属機関 東京大学大学院情報理工学系研究科

本領域では、ロボティクス、医学、心理学、脳神経科学、当事者研究が密に協働して、胎児からの発達を観測、モデル化し、シ ミュレーション実験を行い検証・解釈することで、その本質を解明するとともに、環境等の要因に伴う変化の様相を明らかにし、 これに基づき、発達障害の真に適切な包括的診断法と支援法、支援技術の構築を目指している。

このため、以下の研究項目について、「計画研究」により重点的に研究を推進するとともに、これらの目標に強力に寄与する2年間の研究を公募する。1年間の研究は公募の対象としない。なお、研究分担者を置くことはできない。

公募研究の採択目安件数は、認知脳機能や支援技術の総合的研究で単年度当たりの応募額 1,000 万円を上限とする研究を2件程度、全ての分野の個別的研究で単年度当たりの応募額 500 万円を上限とする研究を5件程度、診断法、支援法、支援技術等の個別研究で単年度当たりの応募額 250 万円を上限とする研究を6件程度予定している。研究の対象と方法論が属する研究項目を選択すること。採択後は、研究項目を超えて研究協力を実施し、研究成果を利用することが可能である。

特に、社会的認知の発達と障害の脳科学および構成論、脳幹形成と関連機能発達(動物モデル含む)、胎児・新生児・乳児に適 用可能な生理・運動・認知計測技術、脳の DMN と自伝的記憶、当事者の会話分析と自然言語処理、及び本領域で得られている知見 と仮説を踏まえた診断・支援・療育法の提案、発達障害者支援技術に関する研究と、新たな発想と知見をもたらす若手研究者によ る提案を期待する。

なお、各研究項目の詳細等については、領域ホームページ(http://devsci.isi.imi.i.u-tokyo.ac.jp/)を参照すること。

研究項目

A01班:構成論 

   A01-1: ダイナミックな相互作用を通じた身体的表象から分離表象への発達原理と発達障害の理解   

 乾敏郎 (京都大学・情報学研究科・教授)

本研究は初期認知発達の神経基盤の解明とその神経回路レベルでのモデル化を目的としています。特にこれまでの研究成果から、「身体化から脱身体化へのプロセス」あるいは「自己中心的表現から分離表象への創発過程」を明らかにします。さらに、コミュニケーション機能の発達障害のニューラルネットワークモデルを提案します。本研究の特色と独創性は、観察・実験のデータから認知発達に関わる脳内メカニズムについて6つの仮説を導き、fMRI などの脳機能イメージング技術により検証するとともに、さまざまな発達データを説明できる理論を神経回路レベルで構築し、発達原理を解明しようとする点にあります。

A01-2: 胎児期からの不随意性・随意性運動の発達論的解析  

山内秀雄(埼玉医科大学・医学部・教授)

本研究の目的は胎児から乳児期早期における運動の随意性・不随意性を再考察することです。胎児から原始反射が消失する乳児期早期までの児の運動のうち随意によるものか原始反射なのかを弁別する明瞭な指標がないのですが、これを弁別しモデルに組み込むための論理を明らかにすることは重要な意義を持っています。脳性麻痺は原始反射の継続的出現と随意運動の機能不全などにより解釈できますが、これらを定量的に構造化することができれば脳性麻痺を含む運動や情動発達の障害の早期診断が容易になる可能性があります。そのために、保育器内の新生児の発達を、行動学的・生理学的に統合解析し、児の行動を客観的に判断しうる研究を行います。

A02班:構成論

A02-1: 自閉症児の療育を目的とした定型性逸脱人工物の開発

寺田和憲(岐阜大学・工学部・助教)

自閉症スペクトラム障害(ASD)者の社会生活を困難にしている原因の一つとして、情報の取捨選択がうまくできず情報の洪水に溺れてしまうという認知機能障害があります。一方で、ASD者は機械に対する選好やこだわり行動という特徴を持ちますが、これは、定型的振舞いが有する高予測性に対する選好と定型性の逸脱に対する忌避として解釈できます。本研究では、ASD児の高予測性(定型性) への選好という特質を利用し、ASD児がロボットの振舞いの規則性を発見した後、ロボットが定型的振舞いを逸脱することで、その背後にある目的(意図)へ 注意を誘導し、心的状態(意図、願望)帰属のための情報の取捨選択方法の獲得を支援するシステムを実現します。

A02-2: 遺伝x環境相互作用を考慮した社会コミュニケーション能力の定型・非定型発達モデル化

篠原一之(長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科・教授)

子の社会的コミュニケーション発達における発達原理を解明するには、「子の遺伝的素因」と「母という環境」を考慮した包括的な視座から、その定型発達と非定型発達(自閉症、社会的コミュニケーション能力障害)をモデル化することが必須です。そこで、本研究では母子コホート集団を追跡し、客観的行動指標と遺伝子・ホルモン計測を行うことで、遺伝x環境相互作用を考慮した社会的コミュニケーション能力の定型発達・非定型発達モデルを構築します。同モデルに基づき、社会的コミュニケーション能力発達における遺伝x環境相互作用の全容のみならず、社会的コミュニケーション能力障害重症度に関与する遺伝・環境的因子も検証します。

B01班:人間科学

 B01-1: 新生児運動非接触計測法と General Movements 診断支援システムの開発 

辻敏夫(広島大学・大学院工学研究科・教授)

新生児に現れる病状・障害の早期発見は、出生後の予後予測や重症度の緩和、運動機能の獲得訓練などの早期適用につながります。本研究の目的は、新生児に生じる自発運動であるGeneral Movements(GMs)を非接触計測し、運動発達と発達障害の関連性を明らかにするとともに、発達障害児もしくはハイリスク児を早期にスクリーニングする手法を開発することです。本研究では、まず、(1)動画像から新生児のGMs を非接触計測する方法を確立します。そして、(2)GMsと自律神経活動の関係性を明らかにして発達の解明に役立てるとともに、(3)GMsを確率的に評価可能な新しい評価インデックスを提案し、発達障害児を診断支援するシステムを開発します.

 

 B01-2: 非侵襲持続モニターによる新生児概日リズムの集学的解明:生後空白の2か月の謎に迫る 

岩田欧介(久留米大学・医学部・助教)

あかちゃんの入眠不良や夜間覚醒は珍しくありませんが、長びくと母児の健康や愛着形成、更には児の認知機能にも影響を及ぼします。私たちはこれまで、あかちゃんのホルモン分泌リズムの観察から、生直後の概日リズムが、昼夜逆転した胎児リズムと、出生時にセットされたリズムから成ることを突き止めてきました。一方、その後の昼夜リズム獲得過程はわかっていません。本研究では、アクチグラフとホルモン測定に加え、幅広い生体周期モニターを駆使して、数時間程度の睡眠周期が、24時間の昼夜リズムに組み込まれる過程を解明し、昼夜リズム獲得の促進因子(睡眠習慣や環境)を用いた睡眠・発達障害の予防・治療につなげる予定です。

   

   

B02班:人間科学

B02-1: 大脳皮質と皮質下の相互作用による社会的認知発達機構とその障害の解明 

中野珠実(大阪大学・生命機能研究科・准教授)

社会性認知能力の中でも特に重要な顔認知機能の発達過程において、大脳皮質と皮質下 (上丘-視床枕)がそれぞれどのように発達し、また相互に影響しているかを解明します。さらに、その相互作用が上手く働かないと、自閉症などの社会性の障害につながる可能性を検証します。そこで皮質下(上丘-視床枕)を経由しないS-cone単独刺激法を顔などの複雑な視覚画像に応用する方法を開発します(皮質下バイパス刺激法)。この刺激法を用いて、乳幼児期の顔認知に大脳皮質と皮質下がどのように関与しているかを行動計測(視線)と脳活動計測により調べます。さらに、同様の手法により自閉症スペクトラム障害の顔認知能力の発達過程を調べます。

皮質下(上丘)を経由しない刺激法を用いた顔刺激の例

(ディスプレイの設定により見え方が変化するため、実際の刺激とは異なります)

B02-2: 視線随伴パラダイムとその応用による階層的行為主体感の発達過程の解明 

宮崎美智子(大妻女子大学・社会情報学部・助教 

自らが能動的に行為を行っている感覚(行為主体感)を獲得することは自己認識や他者意図理解に不可欠です。本研究課題では、我々が開発した視線随伴パラダイム(スクラッチ・イメージ課題)を用いて、行為主体感の発達過程、そして自閉症児における特異性を定量化することを目指します。特に我々は行為主体感には階層性があるという仮定を持っており、高次の行為主体感を有するためには複数モダリティから得られる情報のまとめあげが不可欠であると考えています。そこでこのような階層的な行為主体感の発達を評価可能な視線随伴課題を開発することで、発達障害における「情報のまとめあげ困難説」の精緻化への貢献を目指します。

 

図1.スクラッチ・イメージ課題.被験者は自らの注視によって画面を覆っている黒いレイヤーを削ることができる.

B02-3: 視点と身体表象の重ね合わせから見る発達障害者の脳ネットワーク障害の解明

 川崎真弘(筑波大学・理工学群・助教) 

発達障害者のコミュニケーション障害の一つに、「逆さバイバイ」に見られるような自己から他者への視点変換と身体表象の重ね合わせの問題があげられます。本研究では、この障害に伴う脳情報処理メカニズムを解明することで、発達障害の新たな包括的診断法の構築を目指します。そのために、自己から他者への視点変換を伴う運動模倣に関わる脳波位相同期ネットワークを特定し、健常者と発達障害者での比較を行います。さらに、自閉度とパフォーマンスおよび脳ネットワークの関係性を明らかにすることで、発達障害を評価する新たな行動・生理指標の構築を試みます。

C01班:当事者研究

C01-1: 内部観測に対する評価手法の確立とwell-beingとの関係性解明 

 上出寛子(大阪大学・基礎工学研究科・特任助教 

自閉症当事者の内部観測の構造を定量的に評価可能とする独自の方法論を確立し、当事者にとっての包括的な適応であるwell-beingを予測可能なモデルを提示します。当事者の内部から生じる主観を法則定立的に構造化することが可能な社会心理学的アプローチを採用することで、C01計画班の理論考察を基軸としながらも、理論を検証するための新たな視座を提供します。また、包括的な適応概念夫であるwell-beingに注目し、内部観測の構造との関連性を自閉症当事者と定型発達で時系列的に調べます。これにより、内部観測の構造とwell-beingの因果関係を明らかにし、well-beingの向上を予測するモデルを構築することで、C01計画班の治療的意義を進展させます。

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